中国でシーシャへの取り締まりが強化。店舗や密輸の摘発、現在の規制を解説

中国でシーシャへの取り締まりが強化。店舗や密輸の摘発、現在の規制を解説

中国で、シーシャ(水タバコ)を巡る取り締まりが相次いでいる。

これまでにも空港や国境でシーシャ用フレーバーが押収される事例は確認されていたが、2026年には上海で実際にシーシャを提供していた複数のバーが立件され、広州では数千万元規模のシーシャ用たばこの流通事件が摘発された。

中国でシーシャそのものが全面的に禁止されたわけではない。一方、ここ数年の事例を追うと、取り締まりの対象が「海外からの持ち込み・密輸」から「国内流通」、さらに「シーシャを提供する店舗」へと広がっていることが見えてくる。

以前から摘発されていたシーシャ用たばこの持ち込み

中国でシーシャ関連製品が取り締まりの対象となったのは、2026年になってからではない。

2023年10月、広州白雲国際空港では、中国に入国した旅行者の荷物から「阿拉伯水烟(アラブ水煙)」用の煙膏(シーシャ用フレーバー)59点、計2.95kgが発見された。個人使用の範囲を大きく超える量で、旅客は販売して利益を得る目的だったと説明している。

参照:光明網 / 海关发布

2024年5月から6月にかけては、中国とロシアの国境に位置する満洲里で、複数人が「水客」と呼ばれる運搬役を利用して商品を少量ずつ持ち込む、いわゆる「蟻の引っ越し」方式による密輸を行った事件も発生した。

この事件では、たばこ266点とシーシャ用フレーバー115箱が中国国内へ持ち込まれたとされ、後に満洲里市人民法院で刑事事件として審理されている。

参照:満洲里市人民法院(裁判所) / 澎湃新聞

さらに2024年末には、昆明長水国際空港で一人の旅客からシーシャ用フレーバー422点と7缶、合計218kgが発見された。旅客は海外で購入し、代理購入によって利益を得る目的だったと説明しており、税関が行政事件として立件している。

参照:海关发布 / 昆明海关(税関当局)

この時期の事例では、主な取り締まりの舞台は空港や国境だった。問題となっていたのも、シーシャ店の営業そのものというより、大量のシーシャ用たばこを正規の手続きを経ずに中国国内へ持ち込む行為だった。

2026年、上海ではシーシャを提供するバーが立件

状況が大きく動いたのが2026年だ。

6月16日、上海市静安区で、市場監督管理局、公安、煙草専売局などが合同で、区内の複数のバーを対象としたたばこ関連の一斉検査を実施した。

参照:中国消費者報 / 上海市市場監督管理局

検査を受けたバーでは、煙草専売零售許可証を取得しないままシーシャを販売し、利益を得ていたことが確認された。静安区市場監督管理局は、これを《煙草専売法実施条例》第6条第1項に違反する疑いがあるとして、対象となったバーの運営主体を立件した。

一連の検査ではシーシャ用フレーバー2,000缶以上が押収され、その額は1,200万元(約3億円)を超えた。案件の一部では公安による刑事立件や拘留措置にも進んでいる。

この事件がこれまでの事例と大きく異なるのは、密輸業者や輸入者だけではなく、実際に客へシーシャを提供するバーが直接取り締まりの対象になったことだ。

シーシャを一台単位でサービスとして提供する営業形態であっても、中で使用されるシーシャ用フレーバーがたばこ製品として扱われれば、中国の煙草専売制度の外に置かれるわけではないことが、実際の執行によって示された形となった。

広州では4,600万元を超える大型事件も

上海の店舗摘発から間もない2026年7月には、広州でさらに大規模な事件が明らかになった。

広州市黄埔区の煙草専売局と公安当局は、違法なシーシャ用フレーバーを扱っていたとされる事業を摘発。50万箱を超える煙膏と、シーシャ本体や関連消耗品など約620万点が押収され、事件の規模は4,600万元(約10億円)を超えた。

参照:2Firsts / 東方煙草報

外国人容疑者5人も拘束された。押収品を撮影した映像には「Spectrum Tobacco」の名称が入ったパッケージも確認されているが、その商品の真正性や流通経路については公表されていない。

上海の事件がシーシャを提供する店舗への執行だったのに対し、広州の事件では倉庫や流通網を含む、より大規模なシーシャ用たばこの供給側が対象となっている。

ここ数年の事例を並べると、空港での持ち込み、国境を越える密輸、国内の大規模流通、そして提供店舗まで、シーシャ用フレーバーに対する監視がサプライチェーン全体へ広がっている。

背景にある中国の「煙草専売制度」

中国では、たばこの生産・流通・販売・輸出入を国家が広範に管理する「煙草専売制度」が採用されている。

《中華人民共和国煙草専売法》では、巻きたばこ、葉巻、煙絲などを「煙草専売品」と定め、その生産・販売・輸出入を国家による専売管理の対象としている。関連する事業を行う場合には、煙草専売許可制度に従う必要がある。

《煙草専売法実施条例》でも、煙草専売品の生産、卸売、小売のほか、輸出入や外国製たばこ製品の売買を行う場合には煙草専売許可を取得することが規定されている。

ただし、シーシャ用フレーバーについては少し複雑な問題があった。

同条例では、「煙絲」をたばこ葉などを細かく刻んだり、粉末・粒状に加工したたばこ製品と定義している。

糖蜜やグリセリン、香料などを混ぜたペースト状のシーシャ用フレーバーは、一般的な紙巻きたばこや刻みたばこと形態が大きく異なるため、従来の条文だけから法的位置づけを読み取るのは分かりにくかった。

2025年末、「煙膏」が明確に取り締まり対象へ

その状況を理解するうえで重要なのが、2025年12月に中国国務院弁公庁が公表した「全鏈条打撃涉煙違法活動的意見」だ。

この文書では、たばこ関連の違法行為を製造から輸入、物流、インターネット販売、小売まで一貫して取り締まる方針が示された。

特に注目されるのが、新しいタイプのたばこ・ニコチン製品についての記述だ。

口腔用たばこやニコチンパウチと並び、「煙膏(シーシャ用フレーバー)」についても、たばこまたはニコチンを含むものを許可なく生産・販売することを禁止する方針が明示された。物流や倉庫、非正規ルートによる輸入品、オンライン販売などについても監視と取り締まりを強化するとしている。

これは「2025年12月から中国でシーシャが禁止された」という意味ではない。

新たな法律によってシーシャを全面禁止したというよりも、これまで法的位置づけが分かりにくかった新しいタイプのたばこ関連製品について、少なくともたばこやニコチンを含む煙膏は、許可なく自由に生産・販売できる一般商品ではないという執行方針が明確になった点が重要だ。

そして、その半年後にあたる2026年6月、上海では無許可でシーシャを販売していた複数のバーが実際に立件された。

中国ではシーシャが禁止されたのか

現時点で確認できる情報だけを見る限り、中国本土でシーシャそのものが全国的に全面禁止されたとは言えない。

上海で問題になったのも、シーシャというサービスの存在そのものではなく、煙草専売零售許可証を持たない店舗が、煙草製品として扱われる水煙製品を販売していたことだった。

また、シーシャ本体、ボウル、ホース、炭などの器具・アクセサリーと、たばこやニコチンを含む煙膏がすべて同じ規制を受けるわけでもない。

一方で、単に煙草専売零售許可証(たばこ製品の小売許可証)を取得すれば、海外ブランドのシーシャ用たばこを自由に仕入れて提供できるというわけでもない。中国では輸入、卸売、流通にも専売制度が関係するため、商品の輸入・供給経路自体が合法である必要がある。

さらに、現在の中国ではシーシャ用フレーバーについて、電子たばこのように民間企業が参加できる専用の制度を整備するのか、より強く国家の煙草専売システムへ組み込むのかも明確になっておらず、合法的な生産・輸入・流通・店舗提供に必要な具体的な制度については、依然として不透明な部分が残っています。

国境での摘発から、シーシャを提供する店舗へ

中国では以前から、大量のシーシャ用フレーバーを海外から持ち込む行為や密輸に対する摘発が行われてきた。

しかし、2025年末には国務院が「煙膏(シーシャ用フレーバー)」を明示した取り締まり方針を打ち出し、2026年には上海の複数のバーが無許可でシーシャを販売したとして立件された。さらに広州では、数千万元規模のシーシャ用たばこの流通事件も摘発されている。

一連の動きは、中国でシーシャが突然禁止されたことを意味するものではない。

ただ、これまでナイトライフや飲食サービスの一部として比較的独立した形で広がっていたシーシャに対して、中国の煙草専売制度が実際の店舗や流通まで本格的に適用され始めていることは確かだ。

今後、シーシャ用たばこの合法的な輸入・流通ルートや店舗での提供に関する制度がどこまで明確化されるのか、中国のシーシャ市場にとって大きな転換点となる可能性がある。